【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2020年8月

*有植物の力で救え!世界が迎えるタンパク質危機。

 

現在、世界人口は約78億人であり、国連の発表によると、今から30年後の2050年には世界人口が約100億人に達すると予測されています。この著しい人口増加に伴い、アジア諸国を中心とした発展途上国は、経済発展に加え、食の多様化により食肉の消費量が年々拡大傾向にあります。このペースで人口が増加し続ければ、近い将来、食肉の生産が追いつかなくなり、我々が普段、美味しく食べている重要なタンパク源の“肉”が食べられなくなる「タンパク質危機」が起きる可能性があると考えられています。

 

この「タンパク質危機」を乗り切るための動きとして、食肉の代用となる「培養肉」や「昆虫食」が知られていますが、「植物ミート」の需要も高まってきています。なかでもヘルシーで高タンパク、栄養満点と人気なのが「大豆ミート」です。主原料に大豆を使用するため、食肉よりも短期間に作れ、大豆から植物性タンパク質を抽出し、繊維状にして作られるのでお肉そっくりの食感になります。実は、1970年代ごろに既に「大豆ミート」と言われるビーガン(完全菜食主義者)向けの健康食品は存在していました。ですが近年では、食品会社や研究機関による研究、加工技術の進歩により、「植物ミート」として再開発され、まるで本当のお肉そっくりな食感や食べ応えにまで進化しているのです。

 

一方で、食肉は簡単には増産することはできません。土地や設備、飼料、人手、そして家畜が成長するために、とにかく時間と労力が必要です。さらに畜産分野では、土地整備のための森林伐採や大量の水の消費、牛のげっぷや排泄物によって出るメタンガスによる地球環境への大きな負荷が問題視され続けています。こうした食肉生産の状況の中、環境面と栄養面をカバーしていくには、食肉に加え、地球環境と私たちの身体にも負荷の少ない「植物ミート」の存在はなくてはならなのです。実は、既にアメリカでは、多くのファストフードチェーン店が、競うように植物ミートを使用したメニュー販売を行っており、バーガーキングの「ベジバーガー」は人気上々で、今では、アメリカ全土で販売されているようです。

 

世界的な環境問題への意識や健康志向の高まり、動物愛護の観点より今後益々、「植物ミート」の需要が高まっていくことが期待されています。近い将来、“自動運転車”や“感情を持つロボット”などAI技術が取り巻く環境を当たり前と受け入れていく次世代の子供たちのように「植物ミート」もこれからの人たちには自然と溶け込んでいくことでしょう。

 

環境と健康を考え、植物の力を最大限に活かした食のイノベーションで、これから迎えるであろう「タンパク質危機」に備えたいですね。

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