【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2020年3月

*なぜ種が大きいの?!巨大生物向け果物『アボカド』が生き残った謎

 

日本におけるアボカドは、食生活に溶け込み、スーパーや八百屋で年中購入できる普遍的な果物となっています。糖質がほとんど含まれず、脂質に富むアボカドは、糖質制限ブームもあり、ダイエットに適した作物の1つとして注目されています。さて、アボカドの種、果実の割には大きいと思いませんか?

 

アボカドの種はなぜこんなに大きいのでしょうか?これは、アボカドの原産地である中央アメリカに生息していたマンモス、ウマ、長鼻類(象)、ナマケモノなどの配送トラックほどの大きさがあった巨大生物に合わせて「共進化」した結果だと考えられています。これらの巨大生物は新生代(6500万年前~)に生息しており、同時期に、多くの植物が、巨大化する動物の「口の構造」「好み」に合わせて進化したと推測されていて、アボカドもその1つです。油脂に富むアボカドの果実は、多くのエネルギーが必要な巨大生物にとって理想の果物でスナック感覚の小さな実だったのでしょう。アボカドが大きな種子をもつのは、太古の巨大化した生物に食べてもらい、遠くで排便してもらうことで、種子を散布してもらうための進化の結果です。

 

しかし、巨大生物は約13,000年前に絶滅しました。人類がアボカドを利用し始めたのは紀元前500年前と言われており、巨大生物絶滅後から人類が活用するまでの約10,000年間、アボガドがなぜ生き残れたのか謎のままです。大型のネコ科動物が、丸呑みした肉のように消化した説、今より巨大だったリスが保存食として土に埋めた説など様々ありますが、確証は無いようです。さらに、アボカドの種は毒素を含んでおり、現存のほとんどの哺乳類はこの毒を分解する代謝システムを持っていません。一部、太古から体構造の変わっていない「サイ」などが分解できるようで、この点からもアボカドが「太古の生物」向けに進化した結果だと言えますね。アボカドがどうやって10,000年を生き抜いたのか、いつか解明してほしいものです。

 

ひとたび絶滅の危機を乗り越えた後、アボカドは人の手によって繁栄を得ています。アボカドは人類によって栽培されることで種が保存され、品種改良と言う名の進化が続いています。現在のアボカドの種は、果実全体に対して30%程を占めていて残りの70%は可食部ですが、この大きな可食部は品種改良の賜物です。原種に近いアボカドの中には、種子が大部分を占めるものが残っています。一部の地域では、種子の大きさの異なるアボカドが一緒に売られており、種子が小さな種と見分けがつかない?!なんてことも。均一で小さな種の日本のアボカドは良心的と言えそうです。次にアボカドを手にとったとき、この果物がどうやって10,000年を生き抜いたのか、考えてみて下さい。私達の知らない隠された力が残っているのかもしれませんね。

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