【月一小話 植物の小ネタ バックナンバー】

2018年5月

*光合成をやめた「タカツルラン」*

 

地球上のほとんどの植物は「光合成」を行うことで生きるエネルギーを獲得しています。しかし、植物の中には「光合成」を捨てる道を選んだ変わり者たちがいます。

彼らはどうやって生き抜いているのでしょうか?

 

そんな植物の1つである「タカツルラン」は日本では鹿児島県から沖縄のみに自生する絶滅危惧植物の希少なランです。つる性で樹に巻き付くように成長します。光合成能を失っても彼らが成長できるのは「菌」と共生しているから。一般的なラン科の植物は光合成に加え、菌との共生器官である「菌根」を形成して栄養源を菌からも獲得していますが、タカツルランは生育に必要なエネルギーをすべて「菌」からの供給に頼っています。このような植物は「菌従属栄養植物」や「腐生植物」と呼ばれ世界に500種類以上が知られています。

 

最近まで、タカツルランには不可解な点がありました。タカツルランは他の菌従属栄養植物に比べてとても大きいのです。同じく菌従属栄養植物であるシャクジョウソウの仲間は10 cm程度、ムヨウランの仲間も30cm前後なのですが、タカツルランは時に10 mを超える個体も存在し、その大きさはずば抜けています。では一体、タカツルランはどんな類と共生して巨体を維持しているのでしょうか?

 

答えはタカツルランの根にありました。タカツルランの根からはなんと37種もの菌類がみつかったのです。そのほとんどはサルノコシカケ科など、タカツルランがよじ登る木を分解するキノコの仲間(木材腐朽菌)でした。これまでの研究では、1種の菌従属栄養植物と共生する木材腐朽菌の種類は限定的で、タカツルランのように多数の木材腐朽菌と共生する植物は見つかっていませんでした。タカツルランは様々な菌と大きなコミュニティを形成することで、効率的にエネルギーを獲得し、その巨体を支えていると考えられます。

 

人間社会でも組織を作ることで大きな事を実行できます。さらに組織が大きくなれば、より大きなことが成し遂げられます。タカツルランは大きな組織をその身に作ることで「成長」という巨大事業を実行しているのですね。

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